65点の日

これはいけない。そう思い咄嗟に写真を撮る。そうこれは僕が愛してやまない横浜生蕎麦鈴一での事だ。

まさかとは思ったが

麺が伸びてる。

 

アカンやんか、、イカンて、、、僕が鈴一と出会って早30年近く。こんな日は無かった。だってパックから出して茹でて出すだけだもん、間違いようが無い。僕は咄嗟に思った。『あ、これ65点』と、見回すと新人でも無いオバァ達がやってる、僕は思った『何やってんだ!!マザァファカー!!』が、しかし、券売機に並ぶ更にオバァが『わたしねぇ!!蕎麦!!たぬき!!あ、きしめんもあんの!!じゃあ!たぬき!!おとうちゃん!わたしたぬき!!うどんー?おとうちゃんあたし蕎麦!!』と思った思考のボタンが外れ全てを口に出すモードで叫んでいる。とりあえずたぬき蕎麦食べたいのはわかった。そして僕は思った。

 

 

 

うーん!!75点!!!

今日はこのスイッチの壊れたオバァに免じて10点増しだ。仕方があるまい。これもまた鈴一で過ごす醍醐味、愛想のないジジイ、喋り倒すババァ、そしてたまに来る来訪者、ゴミバケツに入った麺つゆ。その中で出される一杯の天ぷら蕎麦。そこにロマン以外の何があるのだろう。いいやきっとロマンも無いのだが。

ちなみに僕は『必ずカウンターで食べる派』である、この人気店、お客さんが沢山の時は路上にまで丼を持って道で食べてるのを見かけるし、店内は本当に暑い。気持ちは分からなくも無いが彼らを見ていると僕は思う。『本当に鈴一に君達は向き合っているのか?』と、夏の信じられない熱さの中更に10度くらい上がるカウンターのなんなら麺を茹でる熱湯の前で白目をむきながら食べる。

それが向き合うって事じゃ無いのか?路上の奴らに心で問いかける『そんな覚悟はあるのか?』いや、無い。わかる、意味不明だし、自分でもそろそろ何言ってるか分からないし、今日暑いし、仕事足痛くて辛いし眠いし。

それでも僕は白目をむきたい、いや違う、カウンターで食べたい。ここには階級の差も何なら店員と客の関係すら無いのかもしれない、度重なる紛争、飢え、デフレ、アベノミクス、待機児童問題、あらゆる差別や問題はとどまる事を知らない。だが鈴一にはそれは無い、何故なら蕎麦食ってるだけだし。

 

そっと丼を置いた、静かに『ご馳走さま』『有難う御座いましたー』

ここも変わったな。昔はガン無視だったのに。けれど僕はこの今の鈴一とも向き合ってみようと思う、そっと店を出ながら『また来るよ』と心で語りかける。

 

そんな初夏の午後。

 

 

 

 

 

 

本当になんだこの日記。

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